物販スクールの利益構造
「この手法で年商◯◯万円」と語る人が、なぜその手法を売るのか。 自分の帳簿1年分を使って、数字で説明します。金額は伏せて、比率だけを出します。
「本当に儲かるなら、人に教えずに自分でやればいい」。よく言われる指摘で、これは正しいのですが、 返ってくる答えはたいてい「教えるのが好きだから」です。ここで話が止まってしまいます。
止めずに、利益の出かたで考えます。
物販は、仕入れた金額が先に出ていきます。売れて初めて回収でき、売れ残れば在庫として残ります。 保管にも費用がかかります。売上を2倍にするには、仕入資金も2倍必要です。
情報を売る商売には、この制約がありません。教材は複製しても原価が増えず、受講者が10人でも100人でも、 作る手間は最初の1回だけです。売上を10倍にするのに、必要な資金は増えません。
同じ売上をあげたとき、手元に残る割合が違う。だから講師になる。
「儲からないから教える」のではなく、「教えるほうが儲かる」。
これは怠慢でも詐欺でもなく、合理的な選択です。問題はその次にあります。
個人でAmazonに出品しています。ある1年分を、部門ごとに集計しました。
| 項目 | 対売上 |
|---|---|
| 粗利 | 29.1% |
| 荷造運賃 | 11.7% |
| 販売手数料 | 11.4% |
| その他経費 | 7.3% |
| 営業利益 | -1.2% |
粗利が29.1%あっても、営業利益はマイナスでした。 送料と手数料だけで、売上の23%が消えます。
ではなぜ続けているのか。ポイントがあるからです。 買い物に付いてくる販促ポイントを収入に入れると、この年は8.5%の黒字になります。 つまり利益のすべてがポイントで、商品を売る行為そのものは赤字でした。
ポイントの還元率は、私が決めているのではありません。プラットフォームの販促予算です。 制度が変われば、翌月から赤字の側だけが残ります。
「この手法で年商◯◯万円」と語られるとき、その利益がどこから出ているかは語られません。 還元率の高かった時期の実績を、いつでも再現できるかのように見せることができます。
同じ帳簿の中に、対照的な部分があります。海外コスメを、ある卸から仕入れて売っていた分です。 ポイントは一切含めていません。
| 項目 | 対売上 |
|---|---|
| 粗利 | 38.6% |
| 販売手数料 | 12.0% |
| 仕入送料 | 0.1% |
| 差引 | +26.5% |
同じ人間が、同じ年に、同じ場所で売っています。手順も同じです。 それでもマイナス1.2%とプラス26.5%に分かれます。
26.5%を生んでいたのは、誰でも知っている大手ではなく、小さな卸でした。 特別な技術を使ったわけではありません。その卸を知っていたことが、利益そのものでした。
ここから、スクールという商売の構造的な矛盾が出てきます。
良い仕入先とは、みんなが知らない仕入先です。100人に教えれば100人が同じ先に群がり、 奪い合いになって粗利は溶けます。教えた本人の分まで消えます。
だから講師は教えません。教えられません。では何を教えているのか。 すでに知られてしまった、薄利の仕入先とその周辺の手法です。
悪意で薄利を教えているというより、薄利になったものしか教えられないという構造です。
書いた瞬間に、その26.5%は消えるからです。批判している側も、同じ理由で書けません。 それが「教えられないものが利益を生んでいる」ことの、いちばん確かな証拠です。
3番目が肝です。教わる手法は、生活が成り立つほどは稼げないが、体験談が1本書ける程度には動きます。 だから嘘とも言い切れない。追及しにくく、当人にも気づきにくい部分です。
この商売がもっとも儲かる相手は、その分野の判断材料を持っていない人です。理由は4つあり、 どれも利益率に直結します。
| 条件 | 売る側にとっての効果 |
|---|---|
| 中身の良し悪しを判定されない | 教材に金をかけなくてよい |
| 他と比較されない | 相場ができず、値下げ圧力がかからない |
| 稼げなくても自分のせいだと思う | 返金要求もクレームも来ない |
| 小さな成功で強く感謝する | 本人が宣伝役になり、集客費が下がる |
3番目が決定的です。普通の商売は、期待外れなら客が怒ります。この商売は 「努力が足りなかった」と客のほうが引き受けてくれます。 期待に届かなくても、売る側にコストが発生しない構造になっています。
裏返せば、目利き相手の商売は儲かりません。だから「未経験者歓迎」「知識ゼロから」を掲げるのは、 優しさではなくターゲティングです。
本当に有効なら、価値が分かる人ほど買うはずです。物販の経験者、投資の経験者、同業の職人。 ところが募集ページに並ぶのは「未経験から」ばかりです。 経験者に売れないものを、未経験者に売っているという一点で構造が見えます。
全員が同じ先から仕入れるなら、その先はもう終わっています。 「仕入先は教えません、探し方を教えます」という答えなら、 利益の源泉は渡さないと明言しているのと同じです。
受講料を回収する計算をしてみると分かります。差引26.5%が残る良い仕入先を持っていても、 受講料の約4倍の売上を作って、ようやく元が取れます。 残らない側(マイナス1.2%)なら、いくら売っても回収できません。
ここまで書いておいて、私自身がその物販をやっています。だから最後に書いておきます。
数字を分けて見た結果、利益の源泉が自分の外側にあることが分かりました。 プラットフォームの販促予算と、他人がまだ知らない卸。どちらも、相手の都合で消えます。
そこで転売から、自分で設計して作るものへ移しているところです。 自分の設計と技術から出る利益なら、誰かの都合では消えません。
批判ではなく、自分の帳簿を見た結果として動いています。 同じ数字を見れば、同じ結論になると思います。