投資スクールの利益構造
投資を否定する話ではありません。私は株で稼ぎ、そのお金で不動産の頭金と、 ある商売の権利を買いました。株はいまも買い続けています。 ただ増えるのは遅い。だから稼ぎの主軸は別に置きました。 この「遅い」が、スクールの売り文句と正面からぶつかります。
アベノミクスの相場で利益を出しました。そのお金で、最初に買った物件の頭金を払い、 ある商売の権利も買いました。実物に変わっているので、幻ではありません。
ただ、当時の自分の判断力が優れていたかというと、そうは思っていません。 あの時期は、多くの銘柄が上がりました。上げ相場で勝つのは難しくありません。 難しいのは、勝った理由が自分の腕なのか相場なのかを見分けることです。
投資でお金が増える速さは、突き詰めると3つしかありません。
| 変数 | 動かせるか |
|---|---|
| 元手の大きさ | すぐには増やせない |
| 利回り | 上げようとするとリスクが上がる |
| かける時間 | 短くできない |
元手が小さい人が短期間で生活を変えようとすると、利回りを上げるしかありません。 そして利回りを無理に上げる手段は、レバレッジか、値動きの荒いものに賭けるかです。 どちらも、当たれば大きく、外れれば退場します。それは投資というより賭けです。
投資は「増やす」ことはできる。
けれど「早く増やす」ことはできない。
この遅さは、悪いことではありません。時間をかければ確かに増えます。 ただそれだけで生活を変えようとすると、待つ年数が足りないのです。
そこで私は、稼ぎの主軸を事業と不動産に置きました。株をやめたのではありません。 いまも買い続けています。置く場所を増やして、それぞれに違う役割を持たせただけです。 自分が働けば結果が動く場所と、置いておけば時間が働く場所は、両方あっていい。
投資スクールの募集文を見ると、この2つがほぼ必ず並んでいます。 少額から始められて、短期間で成果が出る、と。
ところが上の3変数で見れば、少額かつ短期なら、利回りを極端に上げるしかありません。 それは高いリスクを取るということです。募集文にそう書いてあるものは、まず見ません。
ここを飛ばしたまま「手法」の話に入るのが、この商売の型です。
自動売買のプログラムを自分で作って動かしていました。過去の値動きで試すと、 成績を示す指標が3を超えるものもありました。1でトントン、2で優秀とされる指標です。 かなり良い数字に見えました。
ところが、あとから気づきました。そのルールを作るときに使ったのが、成績を測ったのと同じ期間だったのです。 答えを見てから問題を解いていたようなものでした。
ルール作りに使っていない期間で測り直したら、こうなりました。
| 測り方 | 成績指標 |
|---|---|
| 作成に使った期間(見かけの成績) | 3を超えることも |
| 使っていない期間・過去16年分 | 0.93 |
| 実際に資金を入れた運用 | 0.94 |
| 毎日ただ買うだけ | 0.90 |
1を下回っているので、手数料を含めれば負け越しです。そして決定的だったのは最後の行です。 何も考えずに毎日買うだけの成績と、ほとんど変わりませんでした。 私が組み込んだ判断は、何も足していなかったことになります。
候補をたくさん試すからです。実力がまったく無くても、20通り試せば、 そのうち8割以上は「良い成績」に見える結果を出します。偶然そう見えたものを選んでいるだけです。
怖いのは、誰も嘘をついていないのに、良い数字だけが手元に残ることです。 本人も騙されます。私がそうでした。
スクールの募集ページには、口座の残高や損益のスクリーンショットが並びます。 画像そのものは本物かもしれません。それでも根拠になりません。理由は3つです。
数か月や1年では、運と実力を区別できません。上げ相場しか含まない成績は、 上げ相場が続く限りしか通用しません。
ここが分かれていない成績は、答えを見てから解いた点数です。 私が引っかかったのがこれでした。この質問に即答できないなら、その手法は検証されていません。
投資では、同じ方向に人が増えるほど価格が動いて、優位は消えます。 本当に効く方法なら、人に配れば配るほど効かなくなります。配れるということは、 すでに効かなくなっているか、もともと効いていないかのどちらかです。
株で得たお金は、不動産の頭金と、ある商売の権利に変えました。 そして株自体は、いまも買い続けています。やめた話ではありません。
変えたのは主従です。生活を動かす稼ぎは事業と不動産から取り、 株は時間をかけて増える側として置いています。急がせないぶん、無理な賭けにもなりません。
自動売買はいまも動かしています。ただし収益の柱としては数えていません。 上の検証で実力が見えてしまったからです。
では何のために続けているのか。資金の置き場所を探しているからです。 銀行に置いても、いまの金利ではほとんど増えません。かといって、 根拠のないものに預けるわけにもいきません。だから「預けられる置き場所になるかどうか」を 判断するためのデータを、いま測っている段階です。
稼ぐための運用ではなく、置き場所として成立するかを確かめるための計測です。 落とすために測っているので、良い数字が出ても信じません。 成立しないと分かれば、そこで終わりにします。
投資が悪いとは思いません。私はそこで得た資金で次に進めましたし、いまも続けています。 ただ「少額から、短期で、確実に」を同時に満たす方法は、構造上ありません。 それを売っている商売があるとしたら、売られているのは手法ではなく、期待のほうです。
遅いことは欠点ではありません。遅いと知ったうえで置いておけるかどうかが、 投資が続くかどうかの分かれ目だと思っています。