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待ったをかける歌舞伎役者

売上高と3つの利益

売上の大きさより、どこで何が残るかを見る

売上高が大きくても、金が残るとは限りません。仕入れを引いて何円残るのか、本業で利益が出ているのか、借入利息まで払って残るのか。見る数字によって、商売の姿は変わります。

1. 売上高は、儲けではない

売上高は、商品やサービスを売って客から受け取った金額です。商売の大きさは分かりますが、 仕入れ、家賃、人件費などをまだ引いていないため、売上高だけでは儲かっているか分かりません。

年商¥1億でも利益がほとんど残らない会社があります。反対に、年商が小さくても高い利益率で堅実に金を残す会社もあります。 「月商○○万円」「年商○億円」という言葉だけで、その商売を評価してはいけません。

2. 何を引いたかで、利益の名前が変わる

売上高客に売った金額 − 売上原価仕入れ・材料費など = 粗利益商品やサービス自体が生んだ利益 − 販売費・一般管理費人件費・家賃・広告費など = 営業利益本業で残った利益 + 営業外収益 − 営業外費用受取利息や借入利息など = 経常利益普段の事業活動全体で残った利益

粗利益(売上総利益)

売上高 − 売上原価です。略して「粗利」と呼びます。商品なら仕入原価、製造なら材料費や製造原価を引いた後の利益です。 粗利率が低すぎると、たくさん売っても家賃や人件費を払えません。

営業利益

粗利益 − 販売費及び一般管理費です。商品を売るための人件費、家賃、広告費、通信費などを引いた、本業の実力を見る数字です。 本業がきちんと利益を生んでいるかを見るときは、売上高より営業利益を重視します。

経常利益

営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用です。預金や貸付金の受取利息、借入金の支払利息など、 本業以外でも普段から発生する収支を加えた利益です。借入れが多い会社は、本業で営業利益が出ても、利息を払うと経常利益が小さくなることがあります。

借入返済で間違えやすいこと

借入金の利息は営業外費用となり、経常利益に影響します。一方、借入金の元金返済は費用ではないため、経常利益からは引かれません。 しかし現金は出ていくので、利益の計画とは別に資金繰りも確認します。

3. 利益率にすると、違う大きさの会社を比べられる

金額だけでは会社の大きさに左右されます。そこで、売上高の何%が残ったかを見ます。

粗利率 = 粗利益 ÷ 売上高 × 100
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

粗利率から営業利益率まで大きく下がるなら、家賃、人件費、広告費などの負担が大きいということです。 同じ業種の平均と比べると、原価が高いのか、販売管理費が高いのかを考える手掛かりになります。

4. 業種別の平均売上高・粗利率・営業利益率

次の表は、中小企業庁「令和7年中小企業実態基本調査確報(令和6年度決算実績)」の法人企業を基にした全国平均です。 平均売上高は、各業種の売上高合計を母集団企業数で割りました。粗利率と営業利益率も、各業種の合計額から同じ式で計算しています。

業種1社平均の年間売上高粗利率営業利益率
中小企業全体約¥3.91億25.2%3.7%
建設業約¥2.70億25.1%4.9%
製造業約¥5.76億20.9%4.0%
情報通信業約¥2.69億44.9%5.4%
運輸業・郵便業約¥5.79億24.1%2.9%
卸売業約¥11.38億14.4%2.3%
小売業約¥3.20億29.5%1.7%
不動産業・物品賃貸業約¥1.67億40.5%8.6%
学術研究・専門・技術サービス業約¥1.21億54.5%11.4%
宿泊業・飲食サービス業約¥1.35億66.0%2.9%
生活関連サービス業・娯楽業約¥3.48億34.5%2.0%
その他のサービス業約¥2.43億43.2%4.4%

出典:政府統計の総合窓口 e-Stat・中小企業庁 令和7年中小企業実態基本調査確報「売上高及び営業費用・産業中分類別表(法人企業)」。 金額と利益率は公表された拡大推計値から当サイトが計算し、四捨五入しています。

売上高が全員同じ¥1,000万円なら、残る利益はどう違うか

上の業種別平均を、全員が年商¥1,000万円だった場合に当てはめます。売上高は同じでも、粗利益と営業利益はこれだけ変わります。

商売の例売上高粗利益粗利益¥900万に
必要な売上高
営業利益
ラーメン店宿泊業・飲食サービス業の平均を使用¥1,000万約¥660万
(66.0%)
約¥1,364万約¥29万
(2.9%)
セミナー講師粗利率・営業利益率とも90%で設定¥1,000万約¥900万
(90.0%)
¥1,000万約¥900万
(90.0%)
アフィリエイト情報通信業へ仮置き¥1,000万約¥449万
(44.9%)
約¥2,004万約¥54万
(5.4%)
建設業建設業の平均を使用¥1,000万約¥251万
(25.1%)
約¥3,586万約¥49万
(4.9%)
小売業小売業の平均を使用¥1,000万約¥295万
(29.5%)
約¥3,051万約¥17万
(1.7%)
同じ粗利益¥900万に必要な売上高 = ¥900万 ÷ 粗利率

ラーメン店は、材料原価を引いた粗利益が約¥660万あっても、そこから人件費、家賃、水道光熱費などを払うため、 業種平均の営業利益は約¥29万まで小さくなります。粗利率が高いだけでは、儲かる商売とはいえません。

粗利益を¥900万にそろえると、粗利率90%のセミナー講師は売上高¥1,000万で届きます。 一方、建設業は約¥3,586万、小売業は約¥3,051万の売上高が必要です。

セミナー講師は、粗利率・営業利益率とも90%のモデル値として計算しています。 アフィリエイトは、公的統計にそのまま対応する独立区分がないため、情報通信業へ仮置きしています。 会場費や広告費をかけるか、自分で教材や記事を作るか、外注するかによって実際の利益率は大きく変わります。

同じ年商¥1,000万円でも、営業利益は約¥17万から約¥900万まで違う。
だから、売上高だけを比べてはいけない。

純利益を、大企業サラリーマンの可処分所得と同じにする

「一部上場」は2022年に廃止され、現在はプライム市場などへ再編されています。ここでは比較できる公的な近似値として、 国税庁の令和6年分調査にある資本金10億円以上の株式会社の平均年収¥673万円を使います。

税金と社会保険料は家族構成や年齢、居住地によって変わります。独身・扶養なしなどの簡易条件では、 年収¥673万円の可処分所得をおよそ年間¥510万円と見積もれます。そこで、商売でも税引後の純利益¥510万円を残すことを目標にします。

必要営業利益 = 目標純利益¥510万 ÷(100% − 税率30%)≒ ¥729万
必要売上高 = 必要営業利益¥729万 ÷ 営業利益率
商売の例営業利益率目標純利益必要な年間売上高
ラーメン店宿泊業・飲食サービス業の平均2.9%¥510万約¥2億5,123万
セミナー講師営業利益率90%のモデル値90.0%¥510万約¥810万
アフィリエイト情報通信業へ仮置き5.4%¥510万約¥1億3,492万
建設業建設業の平均4.9%¥510万約¥1億4,869万
小売業小売業の平均1.7%¥510万約¥4億2,857万

同じ純利益¥510万円を残すにも、営業利益率90%のセミナー講師なら必要売上高は約¥810万円、 営業利益率1.7%の小売業なら約¥4億2,857万円です。 売上高の大きさではなく、最終的に残る金で比べる必要があります。

だから、みんな講師やコンサルタントをやりたがる。

ラーメン店には店舗と厨房が必要です。小売業には仕入れと在庫が必要です。建設業には道具、人、車両が必要です。 しかし、講師やコンサルタントは、自分の知識や経験を商品にできます。在庫を抱えず、大きな店舗や設備も持たず、 同じ純利益をはるかに少ない売上高で作れる可能性があります。

実際の商売で稼ぐよりも、その商売のやり方を教えるほうが高利益になることがあります。 だから、物を売っていた人が物販講師になり、店を経営していた人が開業コンサルタントになり、投資をしていた人が投資スクールを始めます。

もちろん、講師やコンサルタントが全員偽物という意味ではありません。見るべきなのは、何を教えているかだけではなく、 その人が実際の商売で稼いでいるのか、教えることで稼いでいるのかです。

会社の純利益は、そのまま経営者の手取りではない

この表は、サラリーマンの可処分所得と会社の純利益を同じ金額にそろえた比較です。 法人の純利益は会社の金です。経営者個人が役員報酬や配当として受け取ると、個人側の税金や社会保険が発生します。 経営者個人の可処分所得を¥510万円にするには、会社にはこの表より大きな利益が必要になる場合があります。

給与の基準:国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査。 可処分所得は年収¥673万円から税金・社会保険料を引いた概算、純利益は営業利益から税率30%を差し引く簡易試算です。

5. 平均は、目標ではなく比較の物差し

この平均には、創業直後の小さな会社から従業員の多い中規模企業まで含まれます。したがって、表の平均売上高をそのまま開業初年度の目標にしてはいけません。 同じ業種でも、商品構成、立地、従業員数、会計上の原価区分によって利益率は大きく変わります。

大切なのは、平均値に合わせることではありません。自分の商売について、売上高、粗利率、営業利益率を毎月記録し、 前月や前年と比べて、どこが良くなり、どこに金が消えたのかを確かめることです。

売上高は見栄を作れる。
粗利益は商売の土台を示す。
営業利益は本業の実力を示す。
経常利益は借入れを含む普段の経営を示す。