詐欺罪になるのはまれ。だから自分で守る
店を開くと、ネット集客の営業電話が毎週のようにかかってきます。 「Googleマップで上位に出します」「ホームページから注文が来るようにします」。 結果が出なくても、多くの場合は犯罪になりません。 このページでは、法律がどこまで守ってくれるのかと、契約の前に確かめることをまとめます。
「詐欺だ」と感じたとき、使える手段は3つあります。それぞれ、決め手になる法律と動く人が違います。
| 種類 | 決め手になる法律 | 動く人 |
|---|---|---|
| 刑事(犯罪として罰する) | 刑法の詐欺罪 | 警察・検察 |
| 民事(契約を取り消して、お金を取り返す) | 民法 | 自分(必要なら弁護士) |
| 行政(業者を処分する) | 特定商取引法・景品表示法など | 消費者庁など |
払ったお金を取り返したいなら、見るのは民事です。 業者が罰せられても、それだけでお金は戻りません。
詐欺罪(刑法246条)は、人をだましてお金を払わせたときに成り立ちます。 ただし、最初からだますつもりだったこと、重要な事実についてうそをついたこと、 そのうそを信じて払ったこと、を示す必要があります。
| 営業でよく聞く言葉 | 詐欺罪になるか |
|---|---|
| 「上位表示を目指します」 | なりにくい。目標を言っただけと扱われる |
| 「集客できます」「効果があります」 | なりにくい。見込みや誇張と扱われる |
| 結果が出なかった | それだけでは足りない |
詐欺罪に近づくのは、次のように事実と違うことを言い、それが記録に残っている場合です。
| 詐欺罪に近い言い方 | 理由 |
|---|---|
| 「Googleの者です」「Google公式の代理店です」 | 身元を偽っている |
| 「契約しないとGoogleマップから消えます」 | 事実と違うことで不安にさせている |
| 作業をまったくしていないのに料金を取る | 最初からだますつもりだったと示しやすい |
出典:刑法第246条(e-Gov法令検索)
電話で名乗られた「Google」を確かめる前に、Googleが公式に書いていることを押さえておきましょう。
| Googleの公式ページ | 書いてあること |
|---|---|
| 不正な電話とテキスト メッセージからの保護 | 通話中に支払い情報を尋ねたり、Googleのサービスでの優遇を約束したりすることはない |
| ローカル検索結果のランキングを改善するヒント | ランキングを上げるためのリクエストや金銭の受け取りには一切応じていない |
| SEO(検索で上位に出すための対策)業者についての案内 | Googleで一番上に掲載されることは誰にも保証できない |
「Googleから来ました」と言う営業は、その時点で疑ってかまいません。 「上位を保証します」と言う業者も同じです。保証できないことを、Google自身が書いています。
出典:Google ビジネス プロフィール ヘルプ 不正な電話とテキスト メッセージからの保護/ Google のローカル検索結果のランキングを改善するヒント、 Google 検索セントラル SEO 業者が必要かどうか
ここがいちばん知られていないところです。 クーリングオフなどの消費者を守る法律は、事業者が仕事のために結んだ契約には使えません。
| 法律 | 店の契約に使えるか |
|---|---|
| 特定商取引法(クーリングオフ) | 原則使えない。営業のために結んだ契約は対象外(第26条) |
| 消費者契約法 | 使えない。「消費者」から、事業のために契約する人が外されている(第2条) |
| 民法の詐欺取消(第96条)・錯誤取消(第95条) | 使える。ただし取り消せるときから5年以内(第126条) |
営業電話が店を狙うのは、このためです。個人の家にかける営業より、守りが薄いのです。
国民生活センターの報告書も、民法の詐欺や錯誤なら事業者かどうかは問題にならない、としたうえで、 この場面は「言った、言わない」のやり取りになると書いています。
取り返せるかどうかは、勧誘のときの記録が残っているかで決まる。
出典:e-Gov法令検索 特定商取引に関する法律第26条/ 消費者契約法第2条/ 民法第95条・第96条・第126条、 国民生活センター 消費生活センターにおける解決困難事例の研究~起業・副業をめぐる消費者トラブルの被害救済を中心に~(令和5年3月)
営業の中には「口コミを増やします」「お客様に星5を書いてもらう仕組みを作ります」という話もあります。 これに乗ると、処分を受けるのは頼んだ店のほうです。
2023年10月から、宣伝だと分からないように見せる宣伝(ステルスマーケティング)は、景品表示法の違反になりました。 Googleマップの口コミでも、すでに消費者庁が措置命令(違反をやめて再発を防ぐよう命じる行政処分)を出しています。
| 時期 | 相手 | 内容 |
|---|---|---|
| 2024年6月 | 医療法人社団祐真会 | 来院した人に、割引と引き換えにGoogleマップで星5か星4の口コミを頼んでいた |
| 2025年3月 | 医療法人社団スマイルスクエア | 特典と引き換えにGoogleマップの口コミを集めていた |
Googleの規約にも反するので、店のプロフィールが止められることもあります。 口コミは、お客様が自分から書いてくれたものだけにしましょう。
出典:消費者庁 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。/ 医療法人社団祐真会に対する景品表示法に基づく措置命令について/ 医療法人社団スマイルスクエアに対する景品表示法に基づく措置命令について
Googleのプロフィールとインスタグラムで集客すると言う業者でした。連絡は契約直後の数回だけで、投稿もありませんでした。 自分でやり始めたら、売上が大きく伸びました。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 会社名・担当者名・折り返しの番号を聞いて、いったん切る | まともな業者なら答えられる。調べる時間を作る |
| 電話では契約もカード決済もしない | その場で決めさせるのは、確かめる時間を与えないため |
| 言われたことをメモし、できれば録音する | あとで取り消すときの材料になる |
| 「Google」を名乗られたら、Googleのヘルプから報告する | Googleは電話で優遇を約束しない |
| お金を払ってしまったら、早めに相談する | 警察の相談窓口は #9110。消費生活センターも話は聞いてくれるが、クーリングオフなどは使えないことが多い |
同じ作業は、多くが自分でもできます。Googleのプロフィールは無料で作れて、写真も説明文も自分で書けます。 まず自分でやってみて、手が回らない部分だけを頼む。この順番なら、何にお金を払っているのかが分かります。